マウスピース矯正中のオーラルケア

― むし歯になりやすいって本当?

健康できれいな歯並びを手に入れるための治療、それが歯列矯正です。
歯列矯正にはさまざまな種類がありますが、近年特に増えているのが、インビザラインなどのマウスピース矯正(アライナー矯正)です。
マウスピース矯正では、従来のワイヤー矯正(マルチブラケット矯正)と異なり、歯に大掛かりな装置を装着する必要がありません。「歯並びを治したいけど、治療中の見た目や不快感が気になる…」という方に特に支持されている矯正治療です。
また、見た目だけではなく、歯磨きがしやすい点もマウスピース矯正の大きな利点と言えます。
とはいえ、マウスピース矯正中に適切なオーラルケアを行わないと、さまざまなトラブルを引き起こすことも…。
そこで今回は、マウスピース矯正中のオーラルケアについて解説していきます。

マウスピース矯正中はむし歯になりやすい?

ワイヤー矯正中は歯磨きがしづらく、むし歯になりやすいことは想像しやすいかと思います。それでは、マウスピース矯正ではどうでしょうか?「歯磨きがしやすいから大丈夫!」と思うかもしれませんが、実は油断は禁物です。マウスピース矯正中にむし歯の治療が必要になる方は意外と多くいらっしゃいます。これは通常の歯磨きだけではケアできない部分があるためです。
では、マウスピース矯正中にどのような口内トラブルが起こりやすいのでしょうか?また、どのような点に気をつけてケアすればよいのでしょうか?

・マウスピース矯正中の口内トラブル4選

1.ものが詰まる

Dental floss, toothpicks, brush and green crocodile on white background

マウスピース矯正中には、主に前歯や小臼歯に対して、IPRという処置を行うことがあります。これは歯の間をわずかに削って隙間を作ることで歯を動かしやすくする処置です。また、一本ずつ歯を奥に動かしていく遠心移動を行う場合、奥歯の隙間が一時的に広がります。このようにしてできた隙間を利用して歯を並べるため、最終的に隙間はなくなりますが、治療中は食べ物が詰まりやすくなってしまうのです。
ものが詰まったまま放置すると、むし歯のみならず、口臭や歯肉炎を引き起こす原因にもなるため、注意が必要です。

tooth cartoon vector, dental problem – spacing teeth ( diastema )

2.口の中が乾燥する

普段意識することはないかもしれませんが、健康な成人では、1日あたり1〜1.5リットルの唾液が分泌されています。唾液には自浄作用があり、歯や歯茎の表面を流れることで、汚れや菌を取り除きます。さらに、唾液に含まれるリゾチームという酵素には抗菌作用があり、細菌が繁殖しづらい環境を保っています。
しかし、マウスピースを装着すると、唾液の流れが妨げられ、自浄作用や抗菌作用が十分に働きません。その結果、むし歯や歯肉炎のリスクが高まってしまうのです。

3.歯茎が腫れる

Gingival recession showing exposed tooth roots and receding gums.

ものが詰まったり、プラーク(歯垢)が付着したままだと、歯茎に炎症が起きることがあります。腫れや出血、痛みなどが自覚症状として挙げられますが、歯科医院で指摘されるまで気づかない場合もあり、注意が必要です。また、ごく稀にマウスピースの材料に対するアレルギーによって歯肉の炎症が生じることがあるため、オーラルケアを継続しても良くならない場合は必ず歯科医師に相談しましょう。

4.着色が気になる

The female teeth before and after whitening. Collage

むし歯のリスクを高める甘い飲み物や、マウスピースを変形させる温かい飲み物は、マウスピースを装着したまま飲むことができません。一方、常温以下で糖分を含まない飲み物はマウスピースを装着したままでも飲めます。ただし、お茶はおすすめできません。お茶にはタンニンという強い色素を含む成分が含まれており、マウスピースをつけたままお茶を飲むと、歯が着色しやすくなります。水以外の飲み物は基本的にマウスピースを外して飲むようにしましょう。

マウスピース矯正中に自分でできるオーラルケア

1.歯間ケア

Home dental care kit. Different tools for dental care on blue background. Floss picks floss interdental brush. Top view. High quality photo

マウスピース矯正中にものが詰まるのを避けることは困難です。しかし、食後すぐに食べ物やプラークを取り除けば、むし歯や歯肉炎のリスクは格段に減らすことが可能です。通常の歯磨きに加えて、必ず行いたいのが「歯間ケア」です。
高圧の水を噴射して汚れを洗い流すウォーターフロスを使用すれば、大きなものが詰まりやすい矯正中にも効率的に歯間ケアすることができます。コードレスでコンパクトなYOXは、外出先でも手軽に使用できますし、マウスウォッシュを噴射することもできるので口臭ケアも同時に可能です。食後すぐに汚れを落とすことで、むし歯や歯肉炎のリスクを大幅に減らせます。

2.乾燥ケア

woman drinking a glass of water in the room

マウスピースを装着していると、つい面倒で水分補給の頻度が減りがちです。乾燥を防ぐために、こまめに水分を摂取するよう心がけましょう。また、もともと歯並びが良くない方の中は口呼吸の癖を持っている方がいらっしゃいます。マウスピースをつけることで無意識に口呼吸が誘発されているかもしれません。

Mouth Tape is used to help promote healthier breathing, improve sleep quality and reduce snoring.

特に夜間の乾燥が気になる場合は、口テープの使用が効果的です。乾燥による不快感が強い時は、スプレータイプの保湿剤を使用するのもおすすめです。

3.着色ケア

Female patient getting dental whitening by professional dentist

一旦着色してしまったステインをセルフケアで完全に除去するのは難しいため、歯科医院でのPMTC(プロフェッショナルケア)を受けることが最も効果的です。
自分でできるケアとしては、食後や色素を含む飲み物を摂取後、できるだけ早く歯を磨くもしくはうがいすることが大切です。また、隣接面のステインは特に除去が難しいので、歯間ケアも同時に行いましょう。
ピロリン酸ナトリウムを含む歯磨き剤は、ステインの蓄積を防ぐ効果がありますが、研磨剤が含まれているものは歯の表面に傷をつけ、逆にステインやプラークが付きやすくなることがあるので注意が必要です。

【まとめ】

Image of a dentist wearing a white coat

マウスピース矯正は、従来の矯正治療に比べて歯磨きがしやすいものの、やはりオーラルケアには注意する必要があります。基本は「食後すぐに汚れを落とすこと」を意識し、歯磨きと歯間ケアを継続することが大切です。
自分に合ったオーラルケア用品を上手に使うことで、快適にきれいな歯並びを目指しましょう。
また、トラブルが発生した場合も早めに対処すれば、軽度の処置で済むことがほとんどです。気になることがあれば、早めに歯科医師や歯科衛生士に相談してください。