オールセラミックスクラウン治療後の歯周病治療について

歯科の2大疾患としては虫歯や歯周病が挙げられます。歯が大きく無くなった場合、被せ物が必要になり、選択肢は様々あります。オールセラミックスクラウンは、自由診療の場合に用いられて銀歯と異なり収縮が起きず、CADCAM冠と異なり色合いがより透明性が高い事が特徴的です。

目次

・オールセラミッククラウンの治療のメリット
・オールセラミッククラウンの治療のデメリット
・オールセラミックスクラウンの歯周病治療について
・ホームケアの正しい歯ブラシの方法

オールセラミッククラウウン治療のメリット

・金属アレルギーが起こらない
 金属を含んでいないため、金属アレルギーが起こりません。また、金属アレルギーの患者様も使用できます。
・審美性が高い
 天然の歯に近い透明度、色彩、ツヤが出るため見た目の影響が受ける事はありません。
・歯茎が変色しない
 金属を使用した材料は、経年劣化で金属の色素が歯茎に染み出して「メタルタトゥー」を作ります。
 オールセラミッククラウンを使用した治療法にはメタルタトゥーは起こりません。
・白さが長持ちする
 他の材料と比較して、よく研磨されているオールセラミックは着色汚れによる変色が少ないです。

オールセラミッククラウン治療のデメリット

・費用が高い
 保険適応外のため、保険診療の費用と比較すると高額になります。
 ※国が認める場合は、先天性の疾患があれば保険適応になる場合があります。

・割れるリスクがある
他の歯科材料と比較して強度が弱いです。強い衝撃が加わると割れるという材質があるため、ぶつかったり、強い食いしばりなどの習癖などで割れることがあります。
噛む筋肉を緩めるボトックス注射や、寝る間に使用するマウスピースを検討しましょう。

オールセラミックスクラウンの歯周病治療について

歯周病の原因は、歯に付着した細菌と代謝産物の塊である「歯垢」であり、「歯垢」を取り除かなければ、歯周病の進行を食い止めることはできません。「歯垢」は1mgには1億個以上の細菌が存在し、歯ブラシやフロスで除去することができます。歯並びが悪い部位に沈着しやすく、上顎では奥歯の頬側の歯面や下顎では前歯の裏側に付着しやすい事が特徴です。唾液に触れると2〜3日で「歯垢」は「歯石」になります。歯石は歯ブラシでは除去出来ず、歯科医院での歯科医師や衛生士による歯周病治療でのみ除去可能です。


今回、大元の原因である歯垢や歯石を取り除く「歯周基本治療」について説明します。
歯周病基本治療は、軽度の歯肉炎の段階でも、中等度以上、重度に進行している人にも共通する治療方法です。歯肉炎や軽度の歯周病なら汚れ(歯垢や歯石)を取り除くプロフェッショナルケアを主体とした歯周基本治療だけで治ることもあります。一方、歯肉の奥に溜まった汚れが歯周基本治療だけでは、取り除けない場合は「歯周外科治療」を行います。治療後の再検査で改善が確認できたら、メインテナンス(定期的に清掃と検査)、治ってなければ再度治療というように、治るまで治療と検査が繰り返されます。


歯周病の進行の程度に関わらず、初めに行われるべき治療が歯周基本治療です。治療内容は、歯垢の除去及び歯石の除去、歯の根の面の滑沢化、グラグラする歯の噛み合わせの調整などです。歯垢の除去をプラークコントロールといい、そのほとんどは自宅でのセルフチェックとなります。場合によっては、歯科医院で器械的に行うこともあります。スケーリングは、歯の表面や根の表面の歯垢歯石を器械で取り除く事です。ルートプレーニングは、歯の表面がざらざらしたり、歯石で満たされていたり、毒素や微生物で汚染された表層を除去する方法です。歯周病の進行に伴い歯は動き、動いている歯で噛むとさらに負担が増すため、その負担を軽くするために歯を削るなどして噛み合わせの調整を行います。それでもグラグラして噛みづらい場合は、歯科用の接着剤で隣の歯と接着し、グラグラを抑えていきます。これらの基本治療により歯周組織が改善され、ポケットの深さが浅く(2〜3mm)維持されればメインテナンス(定期検査)に移行します。


オールセラミックスクラウンは、経年劣化をしても収縮が起こらない材料ですが、歯と被せ物の境目から虫歯になります。セラミックの表面は滑らかなので、プラークなどの汚れが付着しにくいという特徴があります。何も、ケアしないでいるとセラミックの周りに汚れが溜まり、細菌が溜まりやすくなります。「セラミッククラウンを入れたから、治療は終わり」ではなく、クラウンの周りや歯との境目を磨くようにしましょう。

ホームケアの正しい歯ブラシの方法

ブラシの毛先があたっていなければ、プラークは除去出来ません。自分では、磨いているつもりなのに磨けていない人のほとんどが、磨きたい所に毛先を当てられない人なのです。自己流では、磨き残しが存在することがあります。個人の歯並びや歯茎の状態、歯ブラシやフロスの選び方も重要なので、かかりつけの歯医者で自身に合う物や正しい使い方を確認しましょう。

磨き方のポイント
・毛先を磨くポイントに確実に当てましょう。
最初は、鏡を見ながら毛先が届いている事を確認するのでしょう。動かし方は小さく横にでも、縦にかき出す様にしても、円を描くようにしても、いいです。強い力で磨くと、歯を削ることがありますので、手の甲にブラシを当て、皮膚が白く濁る程度の優しい力で磨くことが必要です。


・1日3回、1回10分、1か所につき10−20回ぐらい磨きましょう
歯垢(プラーク)は粘着性が高いため、歯ブラシを1日3回、1回あたり10分の時間をかけて磨きましょう。初回などの頃は、タイマーなどをつけて鏡を見ながら歯ブラシを当てるなど習慣づけを行うことが効果的です。

・細かく動かしましょう
毛先を使って磨く方法がプラークの除去には効果的です。ついつい大きく動かしがちですが、歯には凹凸があるため小刻みに動かさないと、引っ込んだ所には毛先が届きません。出先で歯ブラシがない場合は、歯と歯の間にはフロスやウォーターピックを使用することもおすすめです。

まとめ

口の中は、体温、唾液、食物残渣など細菌が繁殖しやすい場所です。オールセラミッククラウンは他の被せ物と比較すると審美的に優れているだけではなく、金属を使用しておらず、収縮が起きない数少ない材料です。大切な口の中を守るものだからこそ日々のセルフケアは欠かせません。正しい歯ブラシを正しい位置に当てることや歯科医院での定期検診を利用し、被せ物の見た目や機能を長持ちするようにケアをしましょう。

文:歯科医師 鈴木 遼