40歳以上になったら気をつけたい、歯周病のリスクと予防方法について

歯周病とは、歯茎の炎症が起き、歯を支える骨や歯根膜(食べ物を噛む際に、歯に加わる力を吸収・緩和し骨に加わる力をクッションの役割がある)を壊す病気です。痛みを伴うことが少ない為、歯が動いて物が噛みづらい、歯ブラシをしたら歯茎から出血する、口の中から異臭などがしたら歯周病の疑いがあるため注意が必要です。

日本における歯周病の実態

歯周病治療は口腔内の健康を維持し,全身の健康を管理する点からも重要です。
「平成28 年歯科疾患実態調査」によると「歯肉炎および歯周炎」の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は,398万3,000 人であり,平成23 年の調査より66万人以上増加しています。「平成28年歯科疾患実態調査」を元に,歯周病患者数を推定すると約7,000 万人です。しかし,実際に歯科診療所で治療を受けている患者は、約400 万人です。つまり、「歯周病であることに気づかないでいる人」や「気づいていても治療をしないでいる人」がいかに多いかがわかります。

歯周病と全身疾患のリスク

歯周病の進行により歯が失われると食事を選ぶ事になり、歯や口腔の健康だけでなく、口腔内の細菌が血管や体内に多くなると全身の健康にも悪影響を及ぼす事がわかっています。歯周病原因菌は誤嚥性肺炎、血管障害性疾患、早産・低体重児出産、糖尿病、関節リウマチなどの疾患の重症化予防などが可能になります。

女性に特有な歯周病について

女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)は、月経や妊娠時に増減を繰り返します。この女性ホルモンは、血中を介して歯茎へと分泌され歯周病原因菌を増やすことから、男性よりも女性の方が歯周病にかかりやすくなるリスクが高くなります。

喫煙のよる影響

喫煙は、肺がんのみならず多岐にわたり健康を損なうことが、明らかにされています。多くの疫学調査から、人種を問わず喫煙は歯周病の最大のリスクとしての強い関連性が示されていて、喫煙者は非喫煙者に比べて 2 ~ 8 倍の歯周病に罹患しやすいことが報告されています。歯周病の治癒を遅延させるため、歯周治療に対する反応は喫煙者のほうが非喫煙者に比べ低下していることが示されています。

他にも、過度のストレス、不健康な食生活、遺伝的要因がリスクとしてあります。

予防方法

具体的には、適切な口腔衛生の維持です。

日々の歯磨き(歯ブラシ、フロス、歯間ブラシ、ウォーターフロッサーを使った歯間清掃)と歯科医院での定期的な歯科検診やクリーニングが重要です。自身で上手く磨けていない場所を把握し、適応した歯ブラシなどや歯磨き粉などを国家資格所有者に指導を受ける事は大事です。

健康的な食生活の習慣化

バランスの取れた食事は歯周病予防に有効です。砂糖や炭水化物の摂取量を制限し、栄養価の高い食事を摂取する事が重要です。また、昼食後や出先で歯ブラシなどが出来ない場合は水やお茶などの砂糖が入っていない物で口を濯ぐことで、食べカスや細菌を口の内から除去する事も大切です。

禁煙

禁煙をすることは、歯周病予防に限ったことではなく、全身の健康に関して言えることではありますが、歯周病の観点から見ただけでも、喫煙者は非喫煙者に比べて歯周病の発症や進行が早く、歯周病治療を受けた後の結果が悪いことが分かっています。

ストレス管理

過度なストレスを日常的に受けていると、全身の免疫機能を低下させ、口腔内の細菌バランスを崩すことがあります。適度な睡眠、休息をとる事が大切です。精神的な問題を抱えている場合は、心療内科等の受診を一度おすすめします。

もし歯が抜けてしまったら

歯が抜けてしまった後の放置は絶対にやめてください。

歯が抜けてしまった場合は咀嚼が難しく、審美的な問題が出るばかりか、他の歯が抜けた歯の空間を埋めるように倒れ、顎関節症を引き起こすなど悪影響が出てしまいます。歯が抜けた場所には、矯正治療や補綴治療(インプラント治療.ブリッジ、入れ歯)を行う必要があります。この治療は、適切な咬合・咀嚼機能や審美性を回復するだけでなく、長期的に歯周組織を安定させて機能を維持するために歯周病治療を受けることが大切です。

まとめ

早期発見・早期治癒が重要視されている歯科治療では、検査次第で歯周病治療期間は6ヶ月から1年かかる場合があります。その後の定期的なクリーニングを行うことが必要不可欠です。重要なことは歯科医院以外での日常での口腔セルフケアが重要です。
正しく歯ブラシを当てることはもちろん、併用をおすすめするのはウォーターフロッサーです。歯と歯の隙間の清掃効果、歯茎のマッサージ効果、ワイヤー矯正治療やインプラントやブリッジの歯科治療を受けた方は、フロスや歯間ブラシが上手く出来ない方は利用を検討して頂ければと思います。私は歯ブラシとフロスと併用しているのですが、普段使いをする上で重要なのは、持ち運びの際に重くないか、スペースを取らないものを選ぶことだと考えています。

文:歯科医師 鈴木 遼